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土田 秀次*; 間嶋 拓也*; 甲斐 健師
応用物理, 91(9), p.553 - 557, 2022/09
イオンビームを用いた粒子線がん治療のより効果的な治療に向けて、放射線によるDNAなどの生体分子の損傷過程を原子レベルで解明する研究が世界中で進められている。本稿では、イオンビームによる水中での生体分子損傷について、分子周辺で起こる素反応を研究した実験手法を紹介する。この実験では、細胞を模擬するため真空内液体分子線法および微小液滴法を利用し、生体分子水溶液の標的にイオンビームを照射し、標的から放出した生体分子の分解イオンを質量分析することで、分子の切断箇所を特定した。シミュレーションとして、PHITSを利用し水への炭素イオン照射の結果生じる二次電子の物理特性を解析した手法を紹介する。さらに、実験とシミュレーションの共同研究で明らかになった、高速イオンによる生体分子損傷の微視的描像を述べる。
横谷 明徳; 宇佐美 徳子*; 小林 克己*
Photon Factory News, 10(1), p.13 - 14, 1992/05
軟X線領域には、生体構成元素の内殻吸収端に起因する生体分子の吸収スペクトルがある。吸収端前後の吸収断面積の差を利用して、生物細胞内部の特定元素を「狙い撃ち」することが可能であり、これにより放射線のエネルギーを吸収した分子の化学変化(損傷)に対する細胞の応答(修復)のメカニズムを調べることができる。実際に遺伝子、DNA、中のリン原子をK殻励起すると、致死効果や遺伝的変化の誘発が効率よく起こることが知られている。そこで、次の段階として、内殻電離、励起に伴うこのような効果の原因となる特異的な分子変化が果して起きているかどうかを、アミノ酸をモデル物質として調べた。含硫アミノ酸中のイオウをK殻励起し、分解生成物のスペクトルを測定した。励起光源としてシンクロトロン放射を用いた。その結果、イオウの励起の有無で生成物分布が大きく異なることが明らかになった。これは、内殻励起特異的な生体分子変化であると考えられる。